2025年3月10日
こんにちは。
第3回は胃がんについてのお話をいたします。
大部分の胃がんは、ヘリコバクターピロリという菌が胃内に持続感染することで、
長期間の胃炎(慢性胃炎)をもたらし、胃がんを発生させるとされています。
このことは、一般的にも知られるようになっており、特に胃がん健診を定期的に受けておられる方は、ピロリ菌の検査を受けていたり、ピロリ菌が陽性と診断された場合には除菌治療を受けたことがあるかと思います。
除菌治療は、胃がん発症のリスクを3分の1程度に抑えることができ効果的ですが、逆にいえば、除菌治療後でも、ピロリ未感染の方の 40倍(ピロリ感染のままの胃がんの発症リスク)×1/3=13、つまり13倍のリスクは残っているということになります。
ここで問題は、ピロリ未感染の方の13倍という点です。ピロリ未感染の方は胃がんにならないということではないのです。なぜなら、ピロリ未感染の方の胃がん発症率が0なら、0×13=0 ということになり、計算上もピロリ感染しても胃がんにはならないことになってしまいます。
ではピロリ未感染の場合の胃がんの発症率はどの程度なのでしょうか・・・
全胃がんのうち、その頻度は0.66-5.4%といわれており、おおざっぱに約1%とされています。
ピロリ未感染胃がんの原因として、塩分摂取、喫煙、高血糖、ウイルス感染、自己免疫性、遺伝的素因、などが報告されています。
ここで一つ、ピロリ未感染胃がんの例を提示します。
胃部不快感に対して胃酸抑制剤の長期内服経過中に発症した胃がんです。
内服もしていない発症10年前の胃カメラ写真では、ピロリ菌感染のない正常胃粘膜です。しかし、長期内服後の発症1年前の胃カメラ写真では、胃底腺ポリープという良性のポリープが多発していました。

その1年後の胃カメラで、胃底腺ポリープのさらなる増大に加え、写真のような赤いポリープが新たに出現していました。


近年報告される ラズベリー型胃がん(本当にラズベリーに似ています)を疑い、
組織検査を行ったところ、腺窩上皮型胃がんと診断し、内視鏡治療で根治しました。
本症例を これまで報告されている論文をもとに検討した結果、
・胃酸分泌抑制剤で胃底腺ポリープが増大する可能性があること
・高齢と胃底腺ポリープ多発例は、ラズベリー型胃がんの有意な危険因子であること
という2つのことがわかりました。
この2つのことから、ピロリ菌未感染の場合でも、胃酸分泌抑制剤で胃底腺ポリープが多発・腫大してくる場合には、胃酸分泌抑制剤を漫然と続けない様に注意しながら、ラズベリー型胃がん発症の危険性を考えて、定期的に胃カメラで経過を追う必要があるのではないかと考えます。
さて、クリニックの内装工事が終了いたしました。



開院まで残り3週間となり、当クリニックのホームページの閲覧数も増えてまいりました。
ありがとうございます!
開院直前までしっかりと準備を整えていく所存です。