2025年6月11日
春の健康診断を受けた方の中で、要精査・要医療と結果が出た方の受診が次第に増えてきました。
コレステロールやHbA1c、肝機能障害は数値で表記されますので、前回と比べて増悪していることや、正常値と大きく乖離しているということが一目瞭然なので、患者様にもすごくわかりやすく、受診動機となります。
しかし、便潜血という検査の結果は、自覚症状がない場合はもちろん、明らかに血便が出ている場合であっても痔出血だろうといった理由付けで放置される方や、検査の結果が心配で受診された場合であっても再度の便潜血検査を希望される方が少なくないのが現状です。このことからも、大腸カメラがの検査としてのハードルが未だに高いことを知らされます。
便潜血検査は集団検診として、大腸がんの死亡率を下げることが証明されている検査です。1日法を毎年受けた場合には大腸がんの死亡率が60%減少することが報告されています。あくまでも対象は集団であって個人を対象とした研究ではないので、便潜血を繰り替えし受けた個人がどうなるかは実証されていません。
では、どうして便潜血検査が集団の大腸がんの死亡率を下げるのかというと、便潜血陽性となった場合に大腸カメラを受けるからです。大腸カメラを受けることで大腸がんの早期発見や大腸がんに進展する可能性があるポリープを切除するからと説明できます。
実際に便潜血陽性の場合の大腸がんの存在率は2-3%といわれています。しかし、将来大腸がんに進展する可能性がある大腸ポリープの存在率は30-50%といわれています。
確かに、検査者の肌感覚では、便潜血陽性の方の大腸カメラでは、ほぼ全員にポリープを認め、切除している印象があり、やはり便潜血陽性の場合には大腸カメラは必須の検査であるといえます。
問題は、’いかに大腸カメラの検査としてのハードルを下げていくか’につきます。
前処置と検査の苦痛を下げること、検査時間の短縮を図ること、が第一歩となると思われます。
当院では、前処置について腹痛が起きにくい下剤を前日に内服し、洗腸力の高い薬を使用することで少ない用量で前処置の負担を軽減しています。また、検査時の苦痛も丁寧なスコープ操作はもちろん、希望に応じて検査後に影響しない様に鎮静剤を使用しています。


また、検査前の診察で前処置の危険があるか確認し、前処置の薬剤を工夫することで、ご自宅で前処置を行うことも可能としています。検査直前に受診していただき、検査を受けて、病院を出るまで1時間半程度で済むようにしております。
もちろん、院内で前処置を受けて頂くことも可能です。前処置用の個室を設けていますので、お気軽にご利用ください。

残念ながら便潜血検査で陽性と結果が出てしまった方は、大腸カメラを受けることをお勧めいたします。
ご自身のお身体ではありますが、ご家族の方にとっても大事なお身体ですので、ご家族のためにも検査を受けて頂きますように。