
内視鏡検査における鎮静について
内視鏡検査における鎮静について
胃癌や大腸癌の早期発見・治療という点で、一般的にも広く認知されるようになった胃カメラ検査・大腸カメラの検査数は近年、増加傾向にあります。
しかし、自主的に、そして定期的に検査を受けておられる方が一定数いらっしゃる一方で、検査を受けないまま過ごされ、重い自覚症状が出てから検査を受けて大病が見つかり、後悔されている方も一定数いらっしゃいます。
検査を避ける理由の一つとして、内視鏡検査はスコープ挿入時や検査中の苦痛が強い検査でもあるということだと思われます。
胃カメラは、検査中にのどの苦痛と嘔吐反射が強く、その苦痛に対して咽頭麻酔で対応しますが、効果は十分ではないのが現状です。
また、大腸カメラでは検査中の疼痛が問題となります。もちろん、術者の技術も左右する検査ではありますが、体型や腹部手術歴、女性では婦人科疾患歴などの因子によって、スコープ挿入の難度が上がりますので、やはり完全に術者の技術で疼痛をコントロールすることが難しいとも思われます。
そのようなコントロールに難渋する検査時の苦痛に対して、鎮静剤の静脈投与を行う施設が増えており、全国調査報告によると鎮静剤の使用状況は約70%と報告されています。
内視鏡検査時の鎮静剤はいずれも点滴で静脈投与となります。ベンゾジアゼピンが保険収載され、多くの施設で一般的に使用されています。しかし、効果発現が遅く、また覚醒も遅いのが問題となります。また、緑内障の患者様の一部の方には使用できないなどの使用制限もある薬剤です。
一方で、最近では多数の症例から得られた結果に基づいた、プロポフォールの有効性と安全性が報告され、この薬剤も多くの施設で準標準的に使用されています。
当方もこれまで、京都桂病院(内視鏡総検査数;10000件以上/年)・丹後中央病院(内視鏡総検査数:3500件以上/年)の2施設で、プロポフォール鎮静下での内視鏡検査を導入し、臨床研究下に同意を得た多数の患者様に施行しました。投与1時間後には、投与前と同等の筋力・視力・聴力・判断力に回復しており、重篤な薬の副作用は1例も認めませんでした。また、患者様からの満足度も高く、この結果は日本内視鏡学会誌に論文として投稿し、掲載されております。
ただし、プロポフォールは未だ保険収載がなされていない薬剤ですので、患者様からの同意をいただく必要がありますし、使用時には当クリニックで、その薬剤料金は負担いたします。
ひとえに鎮静といっても、鎮静剤の効果が全員同じとは限りません。もちろん、個々に年齢・性別はもちろん、身長や体重も異なります。鎮静剤の投与量は、主に身長と体重から基本使用量を算出し、それに年齢を加味して決定していますが、同じ投与量を投与しても、すぐに鎮静効果が出る場合もあれば、全く出ないこともあります。これは同じ量のお酒を呑んで、すぐに酔ってしまう人もいれば、まったく酔わない人がいることにも似た印象です。
鎮静効果が十分でない場合には、鎮静剤を追加投与することが一般的です。しかし、いたずらに追加して投与量が増えてしまった結果、血圧が低下する、呼吸が弱くなる、検査後に鎮静状態が遷延する、嘔気・嘔吐が出る、などの副作用も憂慮されます。
当クリニックでは、鎮静効果が出にくい場合は、意識がある状態での検査にはなりますが、鎮痛剤を少量併用することで検査の苦痛が緩和でき、スムーズな検査を遂行するようにしています。
検査中は酸素濃度測定、血圧測定を生体モニターで評価しながら、全身状態に留意して安全に検査を施行します。
検査後はリカバリールームに移動し、看護師の見守りの下で覚醒を待ちます。使用薬剤にもよりますが、プロポフォールの場合には15分で、ベンゾジアゼピンの場合には検査終了時に薬の作用を打ち消す拮抗剤を投与し30分で、覚醒評価を行います。その時点で覚醒が得られていない場合には、15分ずつ延長して繰り返し覚醒評価を行います。覚醒評価が基準を来した時点で帰宅が可能となります。
鎮静剤を使用して内視鏡検査を受けていただいた後、上記のように覚醒状態を確認したうえで帰宅となります。
ただし、これは自動車運転や自転車運転能力を保証するものではありません。
今日、自動車や自転車による悲惨な死亡事故のニュースをよく見聞きします。
鎮静剤投与後は、通常状態と比べて、判断力が低下している可能性が考えられます。
事故を起こしてしまう可能性が少なからずあるため、当クリニックでは、鎮静剤を使用した場合に、その日の自動車・自転車運転は認めていません。
鎮静後は運転しないと必ずお約束してください。
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